デンマークのヘルスケア・セクター(製薬企業)に属す、ノボ・ノルディスク(NVO)の株式分析について。
国 | デンマーク |
配当金の税率 (配当税率) | 41.63% (=所属国の現地課税27% ×日本課税20%) |
業種11分類 | ヘルスケア・セクター |
売上高・利益・営業利益率
直近15年で、売上高は3倍・利益は5倍という成長力を誇る。営業利益率は40%を超えておりで、大手製薬としてもかなりの高収益である。
売上地域については、この様になっている。
地域別推移は、この様になっている。
近年2年ではあるが、やはりどの地域でも10%以上の拡大を見せている。
株主還元(配当金・自社株買い)
営業利益は急拡大している(左軸)。
発行株式数は直線的に減っているのが、特徴である。リーマンショックを挟む15年間で30%も減らしてくれ、株主還元に積極的である。
一株利益はやはり成長している。もちろん、近年の高成長&順調な自社株買いの為である。
今後も連続増配の余裕あり。それは一株利益>>配当金となっているため(=配当性向が100%を大きく下回る)。
株価・営業利益の伸び率(平均値と比較)
営業利益・株価とも市場平均(S&P500)にを大きく上回り続けている。なお株価の伸びに配当金(しかも配当利回り高め)は加味されていないので、実際はこれ以上に伸びている。
直近の株価
財政健全性
自己資本、他社資本(負債)、DEレシオの推移を示す。
この15年間で売上は3倍・利益5倍となったのに、自己資本は2倍にしか増えていない。
売上内容について
売上内訳は、100%が医療用医薬品である(一般医薬品・生活必需品などは一切売っていない)。その内訳を以下に示す。
医療用医薬品の内訳
大手製薬会社に似合わず、売上は分散ではなく特化型である。大手は大手でも時価総額業界トップ10に入り、トップのJNJの1/2もの時価総額を誇る会社にも関わらず。
これはこの会社が「4Way戦略」を採用していて、4つのWay=糖尿病・血友病・成長ホルモン・過食症に集中させているからである。大手製薬はどこも「分散型」で設備投資がかさむ会社ばかりなので、異質である。そして4つのWayはどれもそろって、世界患者数が多い・バイオ医薬品だらけ(参入障壁が高い)・他のバイオ医薬品より薄利多売・(糖尿病のみ高齢化で使用増)という特徴がある。いずれもノボ社が安定化する特徴ばかりである。
医療用医薬品>代表的な個別薬の売上について
昨今の大手製薬に珍しい特徴として、分子標的薬剤がほぼ無い・疾患が特化型・バイオ医薬品が多い(ここまで極端におおい会社はない)となっている。
個別商品について
商品名 | トレシーバ皮下注® (一般名:インスリンデグルデク) |
分類 | バイオ医薬品(その中でホルモン製剤に属す) |
治療対象 | 糖尿病 |
特徴 | 持続型のインスリンで同社のレベミル注® よりも長時間。レベミルだと24時間で終了 だが本剤はそれ以上に持続する為、 注射時間が安定しない人に安全である。 |
商品名 | ノボラピッド皮下注® (一般名:インスリンアスパルト) |
分類 | バイオ医薬品(その中でホルモン製剤に属す) |
治療対象 | 糖尿病 |
特徴 | 超即効型インスリンで、LLYのヒューマログ とほぼ同効。 |
商品名 | ビクトーザ皮下注® (一般名:リラグルチド) |
分類 | バイオ医薬品(その中でホルモン製剤に属す) |
治療対象 | 2型糖尿病 |
特徴 | GLP-1作動薬、つまり膵臓インスリン分泌を アシストする作用。従来の血糖降下薬よりも 低血糖リスク小さいが、1型には使えない。 |
商品名 | ゾルトファイ配合皮下注® (一般名:インスリンデグルデク+ リラグルチド) |
分類 | バイオ医薬品(その中でホルモン製剤に属す) |
治療対象 | 2型糖尿病 |
特徴 | 持続型インスリン+GLP-1の配合注射。 配合の2剤とも1日1回タイプで両用する患者 がほとんどの為、本剤が考案された。 |
商品名 | ノボセブン注® (一般名:エプタゴク・アルファ) |
分類 | バイオ医薬品(その中でホルモン製剤に属す) |
治療対象 | 1型血友病(=凝固第8因子欠乏) |
特徴 | 血友病患者は本剤を携帯し、出血のさい 注射しないといけない。人間血液を不使用 の為、ミドリ十字薬害エイズ的な心配不要 |
病院薬剤師からみた見立て
疾患が特化型であり、どちらかというと「守りの経営」をしている。つまりムダな設備投資をほとんどせず勝てる分野で勝負し続けていて、こける要素は見当たらない。
例えば糖尿病薬で75%も占めるときくと、素人目には危険な気がする。しかし薬剤師であれば糖尿病は患者数が多く(日本でいえば10人に1人が治療対象)、しかもメイン商材のインスリンは事実上の寡占状態(ノボ社・イーライリリー・サノフィの3社でほぼ100%)と気が付くので、思わぬお宝だと気が付く。そのインスリン製造もノボ社が世界一であり、つまり「同じ品質・薬効のインスリンを一番安く作れるマーケットリーダー」がノボ社であることを意味する。
なおマーケットリーダーの理屈については、下記書を参考にすると解りやすい。
出典元(企業の年次報告書・10K・その他)
ノボ・ノルディスク(NVO)年次報告書(英語:2019年、2018年、2017年)
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