ここでは、現在における主要な分子標的薬剤の一覧をのせる。
五十音順(あいうえお順)
あ行
アダリムマブ皮下注
ヒュミラ® |
アッヴィ(ABBV) |
関節リウマチ、尋常性乾癬、強直性脊椎炎、クローン病 |
<薬理>抗TNF-α抗体。ヒトTNF-α(炎症反応を起こす)を競合阻害する為、各種炎症疾患が沈静化する |
使用レジメン:なし |
2019年の医薬品別売上で1位。3か月に一度で良く、アレルゲンとなりにくく、さらに自己注射可能のため使用数が伸びた。 |
アバスチン®>ベバシズマブを参照
アバタセプト静注
オレンシア® |
ブリストル・マイヤーズ(BMY)/小野薬品工業 |
関節リウマチ |
<薬理>T細胞阻害剤。抗原提示細胞のCD80/86 と T細胞のCD28 との結合が出来なくなるため、T細胞が(TNF-α放出による)細胞攻撃できなくなる。それによって、各種炎症疾患が沈静化する |
使用レジメン:なし |
インフリキシマブ・エタネルセプトといった従来型の分子標的が利かないリウマチ患者でも、作用機序がより上流であるこの薬なら効く場合がある。 |
アレムツズマブ静注
マブキャンパス® |
サノフィ(SNY) |
慢性リンパ性白血病 |
<薬理>抗CD52抗体。CD52(B細胞性リンパ球の殆どに発現する)にくっつき、B細胞を溶解。これにより抗腫瘍効果をもたらす。 |
使用レジメン:不明 |
イピリムマブ静注
ヤーボイ® |
ブリストル・マイヤーズ(BMY)/小野薬品工業 |
がん(悪性黒色腫、肺がん、前立腺がん) |
<薬理>CTLがん細胞表面のCTL(T細胞の攻撃を抑制する)に結合することで、T細胞によるがん細胞攻撃を有効化する。 |
使用レジメン:不明 |
オプジーポと併用することで抗がん作用が増す。 |
イブランス®>パルボシクリブを参照
イマチニブ錠
グリベック® |
ノバルティス(NVS) |
慢性骨髄性白血病(CML)、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL) |
<薬理>Bcr-Abl-KTI。Bcr-Ablとはフィラデルフィア染色体が作る異常タンパク(正常細胞には決して存在しない)で過剰増殖(がん化)を引き起こすのだが、これを狙い撃ちする。 |
使用レジメン:なし(全て単独投与) |
1日1回内服投与なので通院回数は少なく済む。慢性骨髄性白血病の予後を劇的に改善させた薬(例:初発慢性期の10年生存率が25%から85%へ)である。特許切れして久しく、後発医薬品に置き換わりつつある。 |
インフリキシマブ静注
レミケード® |
ジョンソン&ジョンソン(JNJ) |
関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病 |
<薬理>抗TNF-α抗体。ヒトTNF-α(炎症反応を起こす)を競合阻害する為、各種炎症疾患が沈静化する |
使用レジメン:なし |
2019年の医薬品別売上で5位。2か月に1度の点滴。使用症例数が多いため使いやすいが、特許切れの為バイオシミラーにシェア喰われている。 |
ウステキヌマブ点滴静注
ステラーラ® |
ジョンソン&ジョンソン(JNJ) |
乾癬、クローン病 |
<薬理>抗IL12/23p40抗体。インターロイキン12や23(T細胞・NK細胞の活性化シグナル)が働かなくなるためT細胞・NK細胞が活性化できず、結果として各種炎症疾患が沈静化する。 |
使用レジメン:なし |
TNF-α阻害剤でダメでも、その上流できくこの薬なら有効な場合がある。 |
エタネルセプト皮下注
エルロチニブ錠
タルセバ® |
ロシュ(RHHBY)/中外製薬 |
非小細胞肺癌、膵癌 |
<薬理>ゲフィチニブと同作用。EGFR(上皮成長因子受容体)をブロックすることで増殖シグナル伝達を止め、結果として細胞死を起こす。EGFRはがん細胞では多すぎ・しかも変性して増殖スイッチオンのままであるが、この変性EGFRに対して特によく効く。 |
使用レジメン:なし(他の化学療法薬との併用は無意味の為) |
ゲフィチニブ(イレッサ®)とちがい薬害は起こしていない。膵癌にも有効。特許切れし後発医薬品が出回っている。 |
エロツズマブ静注
エンプリシティ® |
ブリストルマイヤーズ・スクイブ(BMY) |
多発性骨髄腫 |
<薬理>抗SLAMF7抗体。多発性骨髄腫の細胞表面にたくさん発現するSLAMF7に結合することで、NK細胞から狙われ・細胞傷害され、抗腫瘍効果をもたらす。 |
使用レジメン:「レナリドミド+エロツズマブ」「エムプリシティ+エロツズマブ」 |
初期は毎週で、4回目以降は2週間or4週間間隔となる。第一選択薬ではなく、他剤で有効性が認められない場合に選択するレジメンである。 |
オシメルチニブ錠
タグリッソ® |
アストラゼネカ(AZN) |
非小細胞肺癌 |
<薬理>EGFR-KTI。EGFR(上皮成長因子受容体)をのリン酸化酵素をブロックすることで増殖シグナル伝達を止め、結果として細胞死を起こす。従来のゲフィチニブなどでは効きにくかった「EGFR-T790M変異陽性例」でもよく効く。 |
使用レジメン:なし(他の化学療法薬との併用は無意味の為) |
同系統のゲフィチニブ(イレッサ®)とちがい薬害は起こしていない。 |
オレンシア®>アバタセプトを参照
か行
ゲフィチニブ錠
ゴリムマブ皮下注
シンポニー® |
ジョンソン&ジョンソン(JNJ) |
関節リウマチ、潰瘍性大腸炎 |
<薬理>抗TNF-α抗体。ヒトTNF-α(炎症反応を起こす)を競合阻害する為、各種炎症疾患が沈静化する |
使用レジメン:なし |
インフリキシマブ、アダリムマブと同系統・同疾患に効く。自己注射できるため通院回数をへらせるメリットがある。 |
さ行
セツキシマブ点滴静注
アービタックス® |
メルク(MRK) |
がん(大腸がん) |
<薬理>抗EGFR抗体。細胞表面に存在するEGFR(増殖・生存・細胞の転移運動・血管新生などを司るスイッチ)にくっつき抑制することで、抗腫瘍作用を示す。EGFRはがん細胞だけでなく皮膚細胞などでも発現するため、皮膚がやられて副作用がでる。 |
使用レジメン:「mFOLFOX6+P-mab」「FOLFIRI+P-mab」「P-mab単独」など |
効果は強いが、皮膚系の副作用が大変多く予防薬が沢山必要である。パニツムマブとほぼ同効だがこちらはは1週間に1度の投与(=毎週通院)が必要で、直接の細胞傷害作用があって強め。 |
た行
ダサチニブ錠
スプリセル® |
ブリストルマイヤーズ・スクイブ(BMY) |
慢性骨髄性白血病(CML)、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL) |
<薬理>Bcr-Abl-KTI。Bcr-Ablとはフィラデルフィア染色体が作る異常タンパク(正常細胞には決して存在しない)で過剰増殖(がん化)を引き起こすのだが、これを狙い撃ちする。イマチニブとほぼ同効なのだが、同剤で無効例でも有効な場合がある。 |
使用レジメン:なし(全て単独投与) |
1日1回内服投与なので通院回数は少なく済む。 |
デノスマブ皮下注
プラリア®、ランマーク® |
アムジェン(AMGN)/第一三共 |
骨粗鬆症(プラリア)、がん骨転移阻害(ランマーク) |
<薬理>抗RANKL抗体。RANKLは破骨細胞を活性化させる信号なのでこれを抑え込むことで、骨の溶解(減少)を止める。 |
使用レジメン:なし |
ランマークはプラリアの高用量製剤で同成分である。同じ骨破壊阻止薬でも、こちらは6か月に1度の注射で済むのがメリット。認知症寝たきりなどで上体起こせない人間でも、この薬だけは使える。 |
な行
ニボルマブ点滴静注
オプジーポ® |
小野薬品工業/ブリストルマイヤーズ・スクイブ(BMY) |
がん(悪性黒色腫、肺がん、腎細胞がん、胃がん、食道がん) |
<薬理>抗PD-1抗体。がん細胞表面のPD-L1(T細胞の攻撃を無効化するシールド)を破壊することで、T細胞によるがん細胞攻撃を有効化する。 |
使用レジメン:不明 |
2014年発売後、適応急拡大とともに使用量が増えていった。超高額医薬品としても有名で100㎎バイアル1本で72万円、1年使用で3500万円となっていた(2019年現在は1本17万円程度に値下がり) |
ニロチニブカプセル
タシグナ® |
ノバルティス(NVS) |
慢性骨髄性白血病(CML)※イマチニブ耐性例に限る |
<薬理>Bcr-Abl-KTI。Bcr-Ablとはフィラデルフィア染色体が作る異常タンパク(正常細胞には決して存在しない)で過剰増殖(がん化)を引き起こすのだが、これを狙い撃ちする。イマチニブとほぼ同効なのだが、同剤で無効例でも有効な場合がある。 |
使用レジメン:なし(全て単独投与) |
1日1回内服投与なので通院回数は少なく済む。 |
は行
パニツムマブ点滴静注(P-mab)
ベクティビックス® |
アムジェン(AMGN)/武田薬品工業 |
がん(大腸がん) |
<薬理>抗EGFR抗体。細胞表面に存在するEGFR(増殖・生存・細胞の転移運動・血管新生などを司るスイッチ)にくっつき抑制することで、抗腫瘍作用を示す。EGFRはがん細胞だけでなく皮膚細胞などでも発現するため、皮膚がやられて副作用がでる。 |
使用レジメン:「mFOLFOX6+P-mab」「FOLFIRI+P-mab」「P-mab単独」など |
効果は強いが、皮膚系の副作用が大変多く予防薬が沢山必要である。セツキシマブとほぼ同効だがこちらは2週間に1度投与で済み、直接の細胞傷害作用はない。 |
ベバシズマブ点滴静注(B-mab)
アバスチン® |
ロシュ(RHHBY)/中外製薬 |
がん(大腸がん、非小細胞肺癌、卵巣がん)、加齢黄斑変性症 |
<薬理>抗VEGF抗体。血管新生を促す物質「VEGF」を捕えて無効化することで、がん細胞を栄養不足にして殺す作用。血管新生は大人の場合、けが以外で殆どないので副作用は小さめである。 |
使用レジメン:「mFOLFOX6+B-mab」「FOLFIRI+B-mab」など |
有効性と副作用の少なさから使用が増えていて、抗がん剤としてはリツキシマブにつぐ使用金額である(2018年度現在の世界医薬品使用額)。特許切れしているものの、バイオシミラーは適応病名数が少ないために、あまり置き換わっていない。米国では乳癌適応が取消された。 |
ペムロリズマブ点滴静注
キイトルーダ® |
メルク(MRK) |
がん(悪性黒色腫、肺がん、腎細胞がん、胃がん、食道がん) |
<薬理>抗PD-1抗体。がん細胞表面のPD-L1(T細胞の攻撃を無効化するシールド)を破壊することで、T細胞によるがん細胞攻撃を有効化する。 |
使用レジメン:不明 |
オプジーポと同系統の薬。やはり超高額医薬品である。 |
ペルツズマブ点滴静注(PER)
パージェタ® |
ロシュ(RHHBY) |
がん(乳がん |
<薬理>抗HER2抗体。がん細胞に沢山発現するHER2(栄養取り込むための手)を阻害。がんを栄養失調にすることで殺す。トラスツヅマブと併用で相加効果。 |
使用レジメン:「DTX+T-mab+PER」 |
乳がんに対して、同系統のトラスツズマブ併用で大変効果的と解った。 |
ボスチニブ錠
ボシュリフ® |
ファイザー(PFE) |
フィラデルフィア染色体慢性骨髄性白血病(Ph+CML) |
<薬理>Bcr-Abl-KTI。Bcr-Ablとはフィラデルフィア染色体が作る異常タンパク(正常細胞には決して存在しない)で過剰増殖(がん化)を引き起こすのだが、これを狙い撃ちする。 |
使用レジメン:なし(全て単独投与) |
1日1回内服投与なので通院回数は少なく済む。同系統のイマチニブ・ダサチニブ・ニロチニブと異なる構造の為、これらでダメな場合の選択肢となる。 |
ま行
や行
ら行・わ・を・ん
ラニビズマブ硝子体注射
ルセンティス® |
ノバルティス(NVS) |
加齢黄斑変性症、糖尿病黄斑浮腫 |
<薬理>抗VEGF抗体。血管新生を促す物質「VEGF」を捕えて無効化することで、眼球内のよけいな血管が出来ないようにし、視力低下を防ぐ。血管新生は大人の場合、けが以外で殆どないので副作用は小さめである。 |
使用レジメン:なし |
ベバシズマブ(抗がん剤だが黄斑変性にも使用できる薬)と同系統・かつ同程度の治療効果をもつ。 |
ラムシルマブ点滴静注(R-mab)
サイラムザ® |
イーライリリー(LLY) |
がん(胃がんなど) |
<薬理>抗VEGF抗体。血管新生を促す受容体「VEGFR2」にくっつき無効化することで、がん細胞を栄養不足にして殺す作用。血管新生は大人の場合、けが以外で殆どないので副作用は小さめである。 |
使用レジメン:「PTX+R-mab」「mFOLFOX6+R-mab」など |
ベバシズマブと同系統だが、適応がん種が少なく完全ヒト化抗体である(免疫原性が少ない)点が違う。副作用の少なさと効果の大きさから、多用される傾向に。2週間に1度の使用とする場合が多い。 |
脚注
関連項目
レジメン一覧
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