疑義照会は必ず薬剤部をとおる業務である。業務内容としては処方箋鑑査・注射箋鑑査・DI業務と類似するが、その業務に加えて「処方日数(残薬)の調節」「処方意図の確認(調剤薬局での説明用)」も行う。
<例題>【整形外科処方】
●ヒュミラ皮下注ペン0.4㎎ 5本
1回1本 週1回皮下注射
●エディロールカプセル0.75μg×1錠
1日1回朝食後 35日分
以上の処方で、調剤薬局より以下の問合せあり:『ヒュミラ1本残薬が有る為、5本から4本に変えてほしい』
・・・Ans:まず電子カルテで、上記処方した整形外科の記事をひらく。そこにヒュミラに関する特別な記載がないか確認する。(例えば、今回は敢えて5本で処方したなど)
特別な記載がなくば、医師に問い合わせずに処方変更すればよい。(もちろん処方医の権限を仕様しての、代行入力となる)。処方変更の際、連絡すべき事は以下である。
主治医 (なくても可) | 変更内容を電話にて |
病院レセプト (必須) | 変更内容を処方せんコピーにて |
調剤薬局 (必須) | 変更内容を電話にて |
特に調剤薬局に連絡忘れて、『○○さんの疑義照会の件ですが』と問合せられる場合が多いので注意すること。
医師への連絡が必須ではないのは、医師は忙しく(一人でも多くの患者診られた方が病院の利益である為忙しくなる)、その時間を奪う価値がなければ連絡すべきでないからである。
【補足:調剤薬局にとっての疑義照会】
●患者の安全使用の為の問合せ
●調剤報酬を加点できるから:
〇残数調整の疑義照会:(処方変更により)30点を加点
〇残薬調整以外n疑義照会:(処方変更により)40点を加点
「ヒュミラ5本を4本に」のような残数調整の場合は、これだけで30点を加点できる。その為近年、残数調整の細かい疑義照会が増えている。
<例題>【内科処方】
●フランドルテープ40㎎ 28枚
1日1回 1回1枚貼付
●トリアゾラム錠0.25㎎×1錠
1日1回寝る前 28日分
以上の処方で、調剤薬局より以下の問合せあり:『近隣の▲▲泌尿器科で、トリアゾラム錠が処方されている。不要だと思うのでカットしてほしい』
・・・Ans:一見重複投与のために即カット、と行きたいところ。しかし患者の意図(患者確認)が抜け落ちているため、患者に以下を確認してもらう。
「他院のトリアゾラムの残薬は足りているか?あえて当院内科でもだす必要があるか?」
この場合は次の2パターンに分かれる。
処方カット しない場合 | 他院トリアゾラムだけで足りない為、 あえてココでも頼んだ(と患者確認) |
処方カット する場合 | 他院トリアゾラムだけで十分なので、 いらない(と患者確認) |
【補足:調剤薬局では】
もしカットとなる場合、調剤薬局は40点を加点できる。この場合調剤薬局は、重複防止の立派な仕事をしているので、加点して当然ともいえる。
調剤薬局の「〇〇してほしい」は鵜呑みにしてはいけない。患者確認をとらずに電話してくる場合があるためだ。
<例題>【消化器内科処方】
●ボノサップパック×1シート
分2朝夕食後 7日分
調剤薬局より『他病院にて、クラリスロマイシン錠でアレルギー症状がでた。それでもこの除菌薬を使うべきか?』
電子カルテの処方医記録には、処方意図:ピロリ菌1次除菌 と記載。
・・・すぐ他剤変更と行きたいところだが、このような薬剤アレルギー疑の症例はお決まりの注意点がある。
【薬剤アレルギー(疑)の注意点】
●薬剤アレルギーの重篤度合は?
ⅰ)軽症(7日服用で少しかゆい程度)・・・薬変更は必要ではない。
ⅱ)中等度以上(1回服用で即痒み・浮腫や口内炎皮膚炎などの重症症状がある場合)・・・即変更!
●薬剤アレルギー被疑薬を使わず、処方意図を達成する方法は?
この症例でいくと調剤薬局にききとりの結果、浮腫と痒み・口内炎がでて、中止で即改善していた。つまり中等度以上のアレルギーなので即変更である。
薬剤アレルギー被疑薬であるクラリスロマイシンを、使わずかつ処方意図(=ピロリ除菌)を達成できる処方を考えておく。これは主治医に提案する為。この場合はボノサップ=アモキシシリン+クラリスロマイシン+ボノプラザンの配合剤の為NGである。
クラリスロマイシンを使わないピロリ除菌薬があるのか?・・・ボノピオンパック=アモキシシリン+メトロニダゾール+ボノプラザンなので、クラリスロマイシンを含まない。
これだけを考えてはじめて、主治医に提案しても良い(医師の時間を奪わない為にも、ここまで考えてから提案すること!)。提案内容は以下。
【本症例の主治医提案内容】
●クラリスロマイシンアレルギーが中等度以上で危険薬。
●ボノサップパックはその危険薬含有の為、危険。
●ピロリ除菌を達成でき、危険薬を含有しない製剤としてボノピオンパックが存在する。2次除菌ではないが、コメント付きで1次使用してもよいか?
ここまでできて、主治医OKを貰ったら仕上げ。以下を行って完了する。
主治医 (なくても可) | 変更内容を電話にて |
病院レセプト (必須) | 変更内容を処方せんコピーにて |
調剤薬局 (必須) | 変更内容を電話にて |
<例題>
●リナグリプチン錠5㎎×1錠
/分1朝食後 28日分
●メトホルミン錠250㎎×6錠
/分3毎食後 28日分
●インスリングラルギン「リリー」300単位×1キット
/夕10単位
本処方は内科の継続処方で、10/1開始。調剤薬局より問合せあり。『10/25に外科にてCT検査が判明。メトグルコはCT48時間前より休薬必要だが、中止はどうすればいいか?』
・・・もちろん、メトホルミン錠は10/23~中止しないといけない。調剤薬局薬剤師が造影CTに気が付けた事は、賞賛すべきである。
【気が付く為の思考順】
●要注意薬:メトホルミンを注意していた
●メトホルミンの添付文書の「造影CT検査の48時間前は禁忌」の文書を知っていた
●投薬時患者に『まさか、造影CTはないですよね?』と逐一確認していた
➡そこで造影CTすると解り、疑義照会に至った。
関連項目
薬剤師の職種別特徴
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