★分子標的薬剤

分子標的薬剤(分子標的薬剤、英:molecularly-targeted drug)とは、病変部位にピンポイントで攻撃することで効果の強さ・副作用の少なさ両立を目指した薬剤である。正常細胞・病変部位の分子レベルの違いを見分け、病変部位の分子標的とする薬剤故、この名前で呼ばれている。

病変部位の分子のみを攻撃する為に、様々な工夫がされている。例として抗がん剤のベバシズマブは、がん細胞への血管新生を阻止する(がんに栄養が行かなくなる)。これはEGRFという「血管を新しく作れ!」というシグナルを、ベバシズマブが捕まえ・無効化してしまうからである。そのEGRFは、成人した人間では怪我・手術部位以外では殆ど分泌されていない。それゆえ、ベバシズマブはがん細胞の分子だけを攻撃できる。

長所

分子標的薬剤をひとことで言えば「病変部分に、ピンポイントで攻撃できる薬」である。

その為正常細胞への攻撃が小さくなったためダメージが小さく、副作用が少なく済んでいる。例えば抗がん剤といえば昔は「朝から晩まで吐く」などのイメ―ジが強かったが、現在そのようなレジメンは少ない。

また効果も大きく、例えばこれまで治り様がなかった疾患(急性前骨髄性白血病など)も分子標的薬剤によって、治癒可能な疾患となった。

比較:従来の医薬品(分子標的薬剤でない医薬品)は病変部分のほかにも、正常細胞にも巻き添え的に作用してしまっていた。そのため副作用が大きい・効果も限定的とされていた。

病変部位に、ピンポイントで攻撃できる理由は?
➡病変部位に過剰発現する、特定の分子構造を標的として作用するため。
➡例えばリウマチ治療薬で分子標的薬剤にあたる「インフリキシマブ」は、リウマチ病変部位で過剰発現する分子構造「TNF-α」を標的として抑え込む。その結果、リウマチの炎症を強く抑えられ、なおかつ正常細胞へ影響が小さい。

高額医薬品

分子標的薬剤は、高額な医薬品が少なくない。すると年間の薬剤費も、やはり高額となる。例として、同じ関節リウマチの治療法で、「分子標的薬剤を使う場合」「使わない場合」で比較する。

関節リウマチに分子標的薬剤を用いる場合
●メトトレキサート錠2㎎ 4錠/分2朝夕食後(火曜日)
●インフリキシマブ点滴100㎎ 400㎎/2時間投与(隔月)
➡メトトレキサート錠2㎎「日医工」の薬価は85.7円。
年間53週間あるので、85.7×4×53=18164円
➡インフリキシマブ点滴100㎎「日医工」の薬価は43229円。
年間12か月あるので6回投与とし、43229×4×6=1037496円
合計106万円

関節リウマチに分子標的薬剤を用いない場合
●メトトレキサート錠2㎎ 4錠/分2朝夕食後(火曜日)
●プレドニン錠5㎎ 2錠/分1朝食後(毎日)
➡メトトレキサート錠2㎎「日医工」の薬価は85.7円。
年間53週間あるので、85.7×4×53=18164円
➡プレドニン錠5㎎の薬価は9.8円。
年間365日として、9.8×2×365=7154円
合計2.5万円

※薬価については2020年8月時点を参照した。

この通り、医療費を圧迫してしまう短所も併せ持つ。

分子標的薬剤の後発品

分子標的薬剤の特許切れであるが、後発医薬品とはよばれず「バイオシミラー(=バイオ後続品)」と呼ばれる。なお先発品と後発品の名称に関しては、下記の表を参照のこと。分子標的薬剤は一般的に「バイオ医薬品」に属す。

厚生労働省資料より引用

近年、このバイオシミラー市場が急拡大していることが知られている。こちらに日本国内に於ける、医薬品全般とバイオシミラーのみとの売上推移を示す。

全医薬品バイオシミラー
2016104300億円128億円
2017105200億円144億円
2018103300億円215億円
2019106300億円350億円(推計)
2020450億円(推計)
2021534億円(推計)
ミクスOnlineより引用

バイオシミラーメーカーについてはリンク参照の事。

分子標的薬剤の売上ランキング(世界)

以下の様になる。

順位
2018年
薬剤
(一般名)
売上高
(Million USD)
メーカー名
ヒュミラ(アダリムマブ)25,485アッヴィ(ABBV)
エンブレル(エタネルセプト)10,181ジョンソン&ジョンソン(JNJ)
レミケード(インフリキシマブ)7,768ジョンソン&ジョンソン(JNJ)
オプジーポ(ニボルマブ)7,543小野薬品
キイトルーダ(ぺムロリズマブ)7,216メルク&Co(MRK)

出典元:先発品各社の年次報告書(10K方式、又はAnnual Report)より抜粋

ちなみに低分子薬を含めた、全医薬品の売上No1 もヒュミラである。

分子標的薬剤の一覧

あまりに膨大なため、系統ごとに記載した。詳細は個別ページを参照のこと。

(作成中)

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