【医科】薬剤総合評価調整加算の具体的な手法

診療報酬改定のたびにふえる「〇〇加算」について。算定したいけどやり方が解らない、という施設も多いはず。その為、合法的な算定方法の一例を挙げるとする。

今回は「薬剤総合評価調整加算100点」「同・薬剤調整加算150点」の、具体的な手法について述べる。

全体の流れ

厚生労働省HP 「P219 :入院時のポリファーマシー解消の推進」より引用

このサイト(外部リンク)には辿り着くと思われるが、問題は「どうしたら算定できるのか?」という事。そこで、厚労省発表の算定要件を整理し、それに合致した具体的なやり方と、実例を以下で述べる。

●【医科】薬剤総合評価調整加算 100点(退院時1回)
【医科】薬剤調整加算 150点(退院時1回・上記100点に追加可能)
●【医科】退院時薬剤情報連携加算 60点<本稿では割愛・別記事にて>

【医科】薬剤総合評価調整加算 100点(退院時1回)

これは、以下の条件を満たせば算定可能である。

算定要件(=算定するための条件全て)

これが、厚労省発表の要件である(外部リンク P80を参照。公式の文書で恐らく一番詳しい解釈)

要件が長い上、「〇〇ガイドライン(外部)を参照の事」などと外部要件もさらに求める文書であり、算定できるものなら取ってみろ、といわんばかりの複雑さである。文書をまともに読むと時間が足りない為、「要件を満たす為に(一例)」として具体的手法を付け足した。

長い為クリック

A250 薬剤総合評価調整加算
(1) 「注1」に規定する薬剤総合評価調整加算は、複数の薬剤が処方されている患者であって、薬物有害事象の存在や服薬過誤、服薬アドヒアランス低下等のおそれのあるものに対して、処方の内容を総合的に評価した上で、当該処方の内容を変更し、当該患者に対して療養上必要な指導を行う取組を評価したものであり、次に掲げる指導等を全て実施している場合に算定する。
ア 患者の入院時に、持参薬を確認するとともに、(7)の関連ガイドライン等を踏まえ、特に慎重な投与を要する薬剤等の確認を行う。
イ アを踏まえ、患者の病状、副作用、療養上の問題点の有無を評価するために、医師、薬剤師及び看護師等の多職種によるカンファレンスを実施し、薬剤の総合的な評価を行い、適切な用法及び用量への変更、副作用の被疑薬の中止及びより有効性・安全性の高い代替薬への変更等の処方内容の変更を行う。また、評価した内容や変更の要点を診療 録等に記載する。
ウ 当該カンファレンスにおいて、処方の内容を変更する際の留意事項を多職種で共有した上で、患者に対して処方変更に伴う注意点を説明する。また、併せて当該患者に対し、ポリファーマシーに関する一般的な注意の啓発を行う。なお、ここでいうポリファーマシーとは、「単に服用する薬剤数が多いことではなく、それに関連して薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下等の問題につながる状態」をいう。
エ 処方変更による病状の悪化や新たな副作用の有無ついて、多職種で確認し、必要に応じて、再度カンファレンスにおいて総合的に評価を行う。
(2) 「注1のイ」については、入院中の患者であって、入院前に内服を開始して4週間以上経過した内服薬が6種類以上処方されていたものについて、算定する。この場合において、「特に規定するもの」として、屯服薬については内服薬の種類数から除外する。また、服用を開始して4週間以内の薬剤については、調整前の内服薬の種類数からは除外する。
(3) 「注1のロ」については、精神病棟に入院中の患者であって、入院時又は退院1年前のうちいずれか遅い時点で抗精神病薬を4種類以上内服していたものについて、算定する。
(4) 当該加算の算定における内服薬の種類数の計算に当たっては、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤及び液剤については、1銘柄ごとに1種類として計算する。
(5) 「注 1 のロ」及び「注2のロ」に規定する抗精神病薬の種類については、第2章第5部第2節(3)イにおける抗精神病薬の種類と同様の取扱いとする。
(6) 医師は、処方内容の総合調整に当たって、薬効の類似した処方や相互作用を有する処方等について、当該保険医療機関の薬剤師に必要に応じ照会を行う。また、当該保険医療機関の薬剤師は、薬効の類似した処方や相互作用を有する処方等について、必要に応じ医師に情報提供を行う。
(7) 持参薬の確認及び内服薬の総合的な評価及び変更に当たっては、「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」(厚生労働省)、「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))」(厚生労働省)、日本老年医学会の関連ガイドライン(高齢者の安全な薬物療法ガイドライン)等を参考にすること。
(8) 患者に対してポリファーマシーに関する一般的な注意の啓発を行うに当たっては、「高齢者が気を付けたい多すぎる薬と副作用」(日本老年医学会、日本老年薬学会)等を参考にすること。

(9) 「注2」に規定する薬剤調整加算は、「注1」に規定する薬剤総合評価調整加算に係る算定要件を満たした上で、薬効の重複する薬剤の減少又は合剤への変更等により、退院時に処方される内服薬が減少したことを評価したものである。
(10) 「注2」に規定する薬剤調整加算は、「注1」に規定する薬剤総合評価調整加算に係る算定要件を満たした上で、退院時に処方される内服薬が2種類以上減少し、その状態が4週間以上継続すると見込まれる場合又は退院までの間に、抗精神病薬の種類数が2種類以上減少した場合に算定する。
なお、保険医療機関がクロルプロマジン換算を用いた評価を行う場合には、別紙 36 の2に示す係数を用い、クロルプロマジン換算で 2,000mg 以上内服していたものについて、クロルプロマジン換算で 1,000mg 以上減少した場合を 含めることができる。
(11) 「注2」に規定する薬剤調整加算の算定に当たっては、内服薬が減少する前後の内服薬の種類数(クロルプロマジン換算の評価による場合はクロルプロマジン換算した量)を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
(12) 「注2」に規定する薬剤調整加算の算定に当たっては、当該保険医療機関及び他の保険医療機関で処方された内服薬を合計した種類数から2種類以上減少した場合については、区分番号「B008-2」薬剤総合評価調整管理料と合わせて、1か所の保険医療機関に限り算定できることとする。この場合には、当該他の保険医療機関名及び各保険医療機関における調整前後の薬剤の種類数を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
(13) 「注2」に規定する薬剤調整加算は、当該保険医療機関で薬剤調整加算又は区分番号「B008-2」薬剤総合評価調整管理料を1年以内に算定した場合においては、前回の算定に当たって減少した後の内服薬の種類数から、更に2種類以上減少しているときに限り新たに算定することができる。

薬剤総合評価調整加算100点の要件を満たす為に
(1)ーア
持参薬確認
●元々の使用薬すべて把握する事。
「内服薬で入院までに4週間以上継続」
を全て把握しておくこと。
(1)ーイ
カンファレンス
(=多職種共有)
●薬剤師の他に医師・看護師が必要。
話し合い結果での変更とわかる記載を。
メール・オンラインで検討会でもよく、
証拠に電カル記載すること。
(1)-ウ
患者説明
●「内服薬で入院までに4週間以上継続」
のもので変更のモノを患者説明。
●ポリファーマシーの危険性についての
啓発文書を作成・交付するとラク。
(1)-エ
アフターケア
処方変更後にまた多職種で、
当該患者の状態を確認(電カル記録)
(2)
患者の服薬
注1のイ=算定対象となるのは
「内服薬で入院までに4週間以上継続」
を、6種類以上もつ患者に限る。
(3)
精神科入院者
注1のロ=精神科患者の場合。
(4)
剤数カウント方法
6種類以上の薬というカウント方法。
錠剤・カプセル・散剤・顆粒剤・液剤
等に同一一般名薬が幾つあっても
1種類としてカウント。
(5)
抗精神病薬
どの薬を「抗精神病薬」とするかは、
別添「第2章第5部2節(3)イ=別紙36
(6)
疑義照会
無視してよい(必須ではない)
(7)
持参薬評価
入院時に持込薬の確認方法の参考。
無視してよい。
(8)
啓発
患者にポリファーマシー啓発する際、
参考にするとよいサイトの紹介。
無視してよい。

さらに、以下を追加で満たすと「薬剤調整加算150点(退院時1回)」をさらに算定できる。

【医科】薬剤調整加算 150点(退院時1回・上記100点に追加可能)

薬剤調整加算150点の要件を満たす為に
(9)退院時に、さらに剤数が減っている事。
(10)
未来の剤数減
退院後の未来4週間以上、
「内服薬で入院までに4週間以上継続」
のものが2つ以上減少すると見込まれる
(10)
抗精神病薬の
未来の剤数減
退院後の未来4週間以上、
「入院時まで4週間以上継続の抗精神病
薬(クロルプロマジン換算2000㎎以上)」
が(クロルプロマジン換算で)
1000㎎以上減少すると見込む
(11)
診療報酬明細
の記載
減少する前後の内服薬の種類数
(又はクロルプロマジン換算量㎎)を
摘要欄に記載必須。
内服薬の定義・種類数は前述のとおり
(13)
再算定の条件
前回算定した時から1年以内に再算定
する場合は、前回の内服種類数より
更に2種類減少している場合に限る。

具体的なパターン

【A病院外科】
ランソプラゾール錠15㎎ 1錠/分1朝
ビオフェルミン錠 3錠/分3朝昼夕
アムロジピン錠5㎎ 1錠/分1朝
●ロペラミドカプセル 2Cp/分2朝夕
サインバルタカプセル20㎎ 1Cp/分1朝
カデチア配合錠 1錠/分1朝
フェキソフェナジン錠60㎎ 2錠/分2朝夕
10日前にロペラミド追加、あとは以前から継続

100点のみ算定する場合

<Step1>この場合、「内服薬で4週間以上継続」は6剤存在。よって算定対象である。

 (補足)かりデパケンR200㎎錠・セレニカR顆粒40%・デパケンシロップの全てが処方されていても一般名ベースでは「バルプロ酸Na」ひとつだけなので、1種類としてカウントされる。

<Step2>多職種(少なくとも医師・看護師含む)でメール・オンラインでも良いので薬の相談。薬剤師が治療上必要ない薬を(内服薬で4週間以上継続の中から)1つ以上リストアップし、削除or変更提案する。削除or変更提案が2つ以上とおったら、電カルに記録する。

<Step3>患者に減少or変更した薬をすべて説明。その際「ポリファーマシーの啓発文書」を渡す事を推奨。・・・なのだが、実はこの時点で即説明の必要はなく、退院時の指導でよかったりする。

<Step4>減少or変更後の体調変化・副作用の確認。看護師記録から薬関連しそうな症状を抜粋して記載。時には薬剤師自身が患者ものとへ出向く。

<Step5>退院時。入院時と退院時で、どの薬が減少or変更したかを記入。

100点算定だけであれば、薬は元に戻っていてもOK。

100点+150点も算定する場合

<Step1>この場合、「内服薬で4週間以上継続」は6剤存在。よって算定対象である。

 (補足)かりデパケンR200㎎錠・セレニカR顆粒40%・デパケンシロップの全てが処方されていても一般名ベースでは「バルプロ酸Na」ひとつだけなので、1種類としてカウントされる。

<Step2>多職種(少なくとも医師・看護師含む)でメール・オンラインでも良いので薬の相談。薬剤師が治療上必要ない薬を(内服薬で4週間以上継続の中から)2つ以上リストアップし、削除提案する。削除提案が2つ以上とおったら、電カルに記録する。

<Step3>患者に減少した薬をすべて説明。その際「ポリファーマシーの啓発文書」を渡す事を推奨。・・・なのだが、実はこの時点で即説明の必要はなく、退院時の指導でよかったりする。

<Step4>減少後の体調変化・副作用の確認。看護師記録から薬関連しそうな症状を抜粋して記載。時には薬剤師自身が患者ものとへ出向く。

<Step5>退院時。入院時と退院時で、どの薬が減少したかを記入。退院後4週間は2剤減少し続ける必要あるため、退院処方で4週間分・2剤抜きの処方を入力・調剤・交付すると確実である。

・・・実は4週間・2剤以上減少の状態をつくるのにオススメなのが、退院処方を4週間打ってしまうという方法。

【A病院内科】
●ティーエスワン配合T錠20㎎ 4錠/分2朝夕
●レバミピド錠100㎎「オーツカ」 2錠/分2朝夕
コタロー六君子湯エキス顆粒 6g/分3朝昼夕
オルメサルタンOD錠20㎎ 1錠/分1朝
※ティーエスワン・レバミピドは21日投与・14日休薬のサイクル、あとは継続薬
【B整形外科】
●アレンドロン酸錠35㎎ 1錠/週1回起床時(木曜日)
エディロールカプセル0.75μg 1Cp/分1朝
●ケトプロフェンテープ20㎎ 21枚 1日1回腰
※すべて継続薬

100点のみ算定する場合

<Step1>この場合、「内服薬で4週間以上継続」にあたるものは、3剤しかない(オルメサルタン・六君子湯・エディロール)。そのため100点・150点とも算定できない。この患者は算定諦めるしかない。

引用元

令和2年度診療報酬改定について(厚労省サイト。全体的なガイド)

令和2年度診療報酬改定 Ⅳ-6 医師・院内薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組による医薬品の適正使用の推進 -②

令和2年3月5日保医発0305第1号 別添1(医科点数表)のP80(一番細かい解釈が書かれている。迷ったらこれを調べること)

関連項目

薬剤服用歴管理指導料 特定薬剤管理指導加算2 100点(月1回まで)

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