診療報酬改定のたびにふえる「〇〇加算」について。算定したいけどやり方が解らない、という施設も多いはず。その為、合法的な算定方法の一例を挙げるとする。
今回は「特定薬剤管理指導料2(100点)」の、具体的な手法について述べる。
なお調剤薬局版(=薬科)ではなく、病院版(=医科)の算定要件については、「外来化学療法連携充実加算 150点(月1回まで)」を参考に。
全体の流れ

このサイトには辿り着くと思われるが、問題は「どうしたら算定できるのか?」という事。そこで、厚労省発表の算定要件を整理し、それに合致した具体的なやり方を以下で述べる。
【薬科】(新)特定薬剤管理指導加算2 100点(月1回)
これは、以下の条件を満たせば算定可能である。
算定要件(=算定するための条件全て)
これが、厚労省発表の要件である
【対象患者】
連携充実加算を届け出ている保険医療機関で抗悪性腫瘍剤を注射された患者であって、当該保険薬局で抗悪性腫瘍剤や制吐剤等 の支持療法に係る薬剤の調剤を受ける患者
【算定要件】
①レジメン(治療内容)等を確認し、必要な薬学的管理及び指導を行うとともに、
②電話等により、抗悪性腫瘍剤及び制吐剤等の支持 療法に係る薬剤に関し、服用状況や副作用の有無等を患者等に確認し、
③その結果を踏まえ、当該保険医療機関に必要な情報を文書 により提供した場合に算定する。
この要件を満たす為に(一例)
【対象患者】 | 処方元の医院より、「薬剤情報連携のシート」を渡されている。 なおかつ抗がん剤or副作用止め薬を交付している患者のみ。 |
【算定要件】-① | レジメンを確認のうえで指導できている事。 |
【算定要件】-② | 投薬後日に電話・テレビ電話によって、抗がん剤or副作用止め薬 の服薬状況・副作用の状況(服薬継続できるかどうか)を確認。 ➡➡つまり投薬後日に行う事なので、投薬日には算定できない |
【算定要件】-③ | 当該保険医療機関=処方元の医院。 必要な情報=病院では取得できず(=点滴日以外の情報)、 かつ治療継続の障害になりうる情報を提出する。 |
【算定要件】-③ | 文書により提出=病院ごとのフォーマット (無ければ)当サイト作成のフォーマット(某病院参考)で提出 |
これで【対象患者】と【算定要件】はまず満たせる。
この細かい解釈は、以下を参照されたい。
【特定薬剤管理指導加算2】
問 10 特定薬剤管理指導加算1と特定薬剤管理指導加算2は併算定可能か。
(答)特定薬剤管理指導加算2の算定に係る悪性腫瘍剤及び制吐剤等の支持療 法に係る薬剤以外の薬剤を対象として、特定薬剤管理指導加算1に係る業務 を行った場合は併算定ができる。
問 11 患者が服用等する抗悪性腫瘍剤又は制吐剤等の支持療法に係る薬剤の 調剤を全く行っていない保険薬局であっても算定できるか。
(答)算定できない。
問 12 電話等により患者の副作用等の有無の確認等を行い、その結果を保険 医療機関に文書により提供することが求められているが、算定はどの時点か ら行うことができるのか。
(答)保険医療機関に対して情報提供を行い、その後に患者が処方箋を持参した 時である。
この場合において、当該処方箋は、当該加算に関連する薬剤を処方した保険 医療機関である必要はない。なお、この考え方は、調剤後薬剤管理指導加算に おいても同様である。令和2年度診療報酬改定 疑義解釈《調剤報酬 抜粋版》より引用
問 13 電話等による服薬状況等の確認は、メール又はチャット等による確認 でもよいか。
(答)少なくともリアルタイムの音声通話による確認が必要であり、メール又は チャット等による確認は認められない。なお、電話等による患者への確認に加 え、メール又はチャット等を補助的に活用することは差し支えない。
・・・ようは、抗がん剤交付の後日に、電話でリアルタイムに体調確認(=テレフォンフォローアップ)し、それでいて処方元医院が知るべき情報であれば、それを文書で提供するのである。当然抗がん剤の交付時は算定できない為、薬歴に「次回処方箋持参時、算定100点取る」とメモっておけばよい。その際は全く無関係の処方(例:風邪くすりだけ処方)でも算定してよいのである。
次に【施設基準】を満たしていれば、算定ができる。
補足:レジメン一覧はコチラを参照。
施設基準
【施設基準】
(1) パーテーション等で区切られた独立したカウンターを有するなど、患者のプライバシーに配慮していること。
(2) 保険医療機関が実施する抗悪性腫瘍剤の化学療法に係る研修会に年1回以上参加していること。
この施設基準を満たす為に
【施設基準】-(1) | 他者に情報が(視覚的・聴覚的に)漏れない様に なっていればOK。コロナ等感染対策でも 個室化していると思うので、それでOKである |
【施設基準】-(2) | 処方元医院の実施する、化学療法の研修会を 年毎に1回を目安に出席できていればOK。 ※いつからいつという取り決めはなく、年1回 ”くらい”出席する意欲があればよい。 |
これで、要件は満たされる。
【ビジネスチャンス】
●パーティションなどで個人情報に配慮=個室化である。逆に薬局の全投薬カウンターをこうすれば、「コロナ感染対策は万全な薬局です」と謳うこともできる。そのうえ、本算定の要件も満たせて、一石二鳥である。
パーティションと聞くと敷居が高いが、実は個室化は段ボールキットなどでも可能である。
実例と算定可否
この症例なら100%算定できる・返戻されるというものはない。厚生局ごとに解釈の幅が異なる為である。あくまで「参考に」されたい。
<例題>
●11月1日に、処方元医院で抗がん剤点滴(GCS療法)を受けた。「病院からの情報提供用紙」は頂いた。
●本日投薬時に患者の体調を確認し、食欲もあり問題ないと回答あった。この内容を病院向けに紙面にて、情報提供した。
●特定薬剤管理指導加算2(100点)は算定してよいか?
➡Ans:算定してはいけない。まず患者の体調確認のタイミングが悪く、投薬日より後でないといけな。次に、電話確認(テレフォンフォローアップ)も行えていない。そして、内容的にも病院に提供する価値はない(病院でもわかるような内容だからである)。
よって、算定不可である。
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