セクター11分類(英:11 Sectors)とは、世界の産業を世界産業分類基準(GICS)によって、11種類に分類したもの。
セクター分類が注目される理由として「成長性の違い」「不景気耐性(底堅さ)の違い」などが挙げられる。
Global Industry Classification Standardの略称で、1999年に米国の格付け会社であるS&P(スタンダード・アンド・プアーズ)と機関投資家向けに指数や分析ツールを提供するMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)が共同開発した産業分類のこと。世界の産業を10のセクター、24の産業グループ、67の産業、156の産業サブグループに分類している。
世界中の金融機関で標準化されており、投資信託や企業分析で業種分類する際に多用されている。
野村證券サイトより引用
成長率
セクター11分類毎に、長期間の成長率が全く異なっている。
1957~2003年の場合
下記表は、米国株式のセクター別トータルリターン(1957~2003年統計)である。
1 | Health Care (ヘルスケア) | 14.19% |
2 | Consumer Staples (生活必需品) | 13.36% |
3 | Information Technology (情報技術) | 11.39% |
4 | Energy (エネルギー) | 11.32% |
5 | Consumer Discretionary (一般消費財) | 11.09% |
6 | Financials (金融) | 10.58% |
7 | Industrials (資本財) | 10.22% |
8 | Communication Servies (情報通信) | 9.63% |
9 | Utilities (公共事業) | 9.52% |
10 | Materials (素材・資源) | 8.18% |
11 | Real Estate (不動産) | (不明) |
平均 | Average (市場平均≒S&P500指数) | 10.95% |
ヘルスケアが最も伸びていて、Materials(素材・資源)はあまり伸びていないことが解る。
2004年~2020年の場合
近年(2004年~2020年)の株価推移は少し異なっている。

市場平均はSPYという指数である。近年は「情報技術;VGT」や「一般消費財;VCR」の伸びが目立っている。理由として前者は「Facebook、Apple、Google、Microsoft」を、後者は「Amazon」を含むからである。いずれも近年は市場シェアの急拡大で伸びた会社であり、今後の伸びる余地は明らかに少ないとされている。つまりこの傾向は近年だけの、一時的な可能性が高い。
不景気への耐性(底堅さ)
セクター11分類ごとに、不景気時の株価の落ち込み方もまったく違う。比較用の指数として、バンガード社のセクター別ETFの「リーマンショック前最高値」「リーマンショック底値」「2008年(リーマンショック時)の下落率」を載せる。
リーマンショック前後
セクター名;ETF名 | 開始時値段 | リーマンショック 前最高値 | リーマンショック 底値 | 2008年 下落率 | |
1 | Health Care (ヘルスケア;VHT) | 50USD 2004/1 | 63.99 | 37.37 | -23.3% |
2 | Consumer Staples (生活必需品;VDC) | 50USD 2004/1 | 77.2 | 46.55 | -16.6% |
3 | Information Technology (情報技術;VGT) | 50USD 2004/1 | 64.78 | 28.85 | -42.8% |
4 | Energy (エネルギー;VDE) | 50USD 2004/1 | 132.74 | 52.19 | -39.6% |
5 | Consumer Discretionary (一般消費財;VCR) | 50USD 2004/1 | 62.43 | 24.02 | -37.9% |
6 | Financials (金融;VFH) | 50USD 2004/1 | 67.68 | 13.07 | -48.9% |
7 | Industrials (資本財;VIS) | 50USD 2004/1 | 79.31 | 36.15 | -39.8% |
8 | Communication Servies (情報通信;VOX) | 50USD 2004/1 | 84.48 | 34.42 | -38.6% |
9 | Utilities (公共事業;VPU) | 50USD 2004/1 | 89.74 | 46.64 | -27.9% |
10 | Materials (素材・資源;VAW) | 50USD 2004/1 | 98.50 | 34.94 | -46.5% |
11 | Real Estate (不動産) | ー | ー | ー | ー |
平均 | Average (市場平均 ≒S&P500指数;SPY) | 115.02USD 2004/1(参考) | 157.52 | 67.10 | -36.8% |
近年最大の経済危機であったリーマンショック時、セクター毎にまったく異なる値動きをしている。
下落率が小さい4業種「ヘルスケア、生活必需品、情報通信、公共事業」は、ディフェンシブ株とも呼ばれる。
下落率の大きい4業種「エネルギー、金融、素材・資源」は景気敏感株とも呼ばれる。
リンク
The Grobal Industry Classification Standard(GICS®)(英語)
出典元(企業の年次報告書・10K・その他)
株式投資の未来(日本語版・ジェレミー・シーゲル著)
株式投資 第4版(日本語版・ジェレミー・シーゲル著)
関連項目
生活必需品セクター
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