英国の生活必需品・セクターに属す、ブリティッシュアメリカン・タバコ(BTI)の株式分析について。
国 | 英国 |
配当金の税率 (配当税率) | 20.375% (=所属国の現地課税0% ×日本課税20%) |
業種11分類 | 生活必需品・セクター |

売上高・利益・営業利益率

直近15年で、売上高・営業利益率ともに右肩上がり。特筆すべきはリーマンショック前後で、利益額はむしろ上昇している。さすがは「生活必需品」セクターで、不景気にあまり関係ない。
売上地域については、この様になっている。

地域別推移は、この様になっている。

2017➡2018の米国売上激増だが、これはレイノルズアメリカンの買収のため。他の市場では伸び悩んでいる。
株主還元(配当金・自社株買い)

営業利益は右肩上がりで、15年で2.5倍増している(左軸)。
発行株式数は近年横ばい。株主還元は自社株買いではなく、配当金還元に依存している。

一株利益は増大中。
連続増配24年と配当貴族手前である。配当性向は90%と伸びしろが小さく、一見すると「どこかで減配するのでは」と不安にさせる。
株価・営業利益の伸び率(平均値と比較)

実はタバコ業界の面白い構図がみえてくる。
まず株価。2017年前後のメンソールタバコ規制により、株主に敬遠されて半減した。つまり期待されていない。
次に利益。株価は下がったのに、利益はむしろ急上昇した。不自然な事に、赤線と青線がクロスしている。
つまり実際の業績はいいが、将来を悲観されて売られ、結果的に割安化している。それが近年のたばこ株の特徴。
直近の株価
財政健全性
自己資本、他社資本(負債)、DEレシオの推移を示す。

※2008年以前についてはあてにしないように。
DEレシオが1.2前後ととても低く、実は財政安定企業である。たばこ業種の特徴として「新製品はあまり開発せず、既存製品の売上に頼る」というのと、「上位5社で世界市場のほぼ全てを占める寡占企業である(しかも国策で新規参入できない)」というものがある。そのため開発費用が少なく、競合もいないので値上げしても売上落ちない。
そのためDEレシオが小さく、財政安定企業となる。
売上内容について

売上内訳は、89%が燃焼式タバコ、2%がベイパー製品、3%が加熱式タバコ、4%が従来型オーラル製品である。もちろんすべてタバコ関連の商品ばかりである。
売上内訳の推移

主力の燃焼式タバコは売上停滞。ほかは概ね伸びている。
個別ブランドについて
燃焼式タバコ(紙巻タバコ)

ブランド名 | ダンヒル、ケント、ラッキーストライク、 ポールモール、ロスマンス、ニューポート、 キャメル、アメリカンスピリット |
内容 | 従来型のタバコ。売上89%をいまも占める。 |
特徴 | 先進国では売上低下・途上国でその分増加。 依存性が高く、健康被害も大きい商品群。 タバコ葉を燃焼により、たばこ風味の霧 (ベイパー)を発生させる。 |
従来型オーラル(嗅ぎたばこ)

ブランド名 | グリズリー、キャメルスナス |
内容 | |
特徴 | タバコ葉の粉末を燃焼も過熱もさせず、 粉塵を鼻で吸うことで楽しむ。 ※日本では未発売、米国のみ |
他社 類似製品 |
加熱式タバコ

ブランド名 | グロー |
内容 | 加熱式タバコ。 |
特徴 | 利益率が従来の紙巻きたばこより高い。 タバコ葉を、燃焼でなく加熱により たばこ風味の霧(ベイパー)を発生。 香りそのまま有害物質は90%以下に 、煙も無い。 |
他社 類似製品 | プルームテック(日本たばこ産業)、 iCOS(フィリップモリス)、 |
ベイパー製品(電子タバコ)

ブランド名 | ビュース、バイプ |
内容 | |
特徴 | タバコ葉でなく液体を 加熱により、たばこ風味の霧(ベイパー) を発生させる。 ※日本では販売できない (ニコチン入電子タバコは法律で禁止) |
他社 類似製品 | VAPE(インペリアルタバコ) |
投資家としての見立て
投資家として見ると、タバコ業種は「業績いいわりに割安」「割安で株価低下しているため、お買い得」「長期的なリターンが最良(ヘルスケアセクターすら凌ぐ)」と、魅力的な業種である。さらにはタバコ規制がかかり売上減しても、値上げに転嫁できる(寡占企業ゆえ値上げしても消費者は買う)ため、業績悪化は考えにくい。
※長期リターンがタバコ業種>ヘルスケアセクター??
事実。ジェレミー・シーゲル博士の銘柄別解析による、米国長期リターン上位20銘柄(通称:シーゲル銘柄)のトップ5は
1位:アルトリアグループ(MO)=タバコ会社
2位:フォイップモリス(PK)=タバコ会社
3位:アッヴィ(ABBV)=製薬会社
4位:アボット(ABT)=医療機器会社
5位:コカ・コーラ(KO)=清涼飲料水会社
と、たばこ株が圧倒的に強い。BTIは米国株ではない為含まれないが、これも長期的に市場平均を上回るリターン。シーゲル銘柄および、株式投資の基本的な考え方は下記書を中心に考えるとよい。
いっぽうでその利益の泉源は、タバコという嗜好品である。健康を害することで売上ているともとれる。
出典元(企業の年次報告書・10K・その他)
ブリティッシュアメリカン・タバコ(BTI)年次報告書(英語:2019年、2018年、2017年)
コメント