英国の生活必需品・セクターに属す、ユニリーバ(UL)の株式分析について。
※UN=オランダ本社の、UL=英国本社の売上・株価をさす。両者とも同じ値動きだが、所属国の課税が違うので注意。基本的には「UL」の方を買うとよい。
国 | 英国 |
配当金の税率 (配当税率) | 20.375% (=所属国の現地課税0% ×日本課税20%) |
業種11分類 | 生活必需品・セクター |

売上高・利益・営業利益率

直近15年で、売上高は20%増・利益は100%増と好調。この傾向は「不採算事業を売却する」姿勢のためで、世界一有名な紅茶ブランド・リプトンですら売却対象となったことも。営業利益率は20%程度で、生活必需品セクターとしては高め(さすがに製薬企業には及ばない)。
売上地域については、この様になっている。

地域別推移は、この様になっている。

直近3年だけ切り取れば、どの地位でも売上増加している(ヨーロッパのみ微減)。
株主還元(配当金・自社株買い)

営業利益は右肩上がりで、15年で倍増している(左軸)。
発行株式数は2005➡2006で倍増したものの、これは株式分割によるもの。その後は右肩下がりで、自社株買いを積極的にやってくれている。

一株利益は増大中。
連続増配25年超の配当貴族で、いまもなお配当性向に余裕あり(=配当金<一株利益の状態)。配当貴族は運用成績がよいことも解っており、今後の伸びも望める。
株価・営業利益の伸び率(平均値と比較)

営業利益・株価ともに市場平均(S&P500)に互角である。
ここには配当金が含まれない為、実際はS&P500 をしのぐ株価の伸びである。
直近の株価
財政健全性
自己資本、他社資本(負債)、DEレシオの推移を示す。

慢性的に負債の大きい企業だったが、近年は改善傾向。
売上内容について

売上内訳は、42%が化粧品・パーソナルケア、37%が食品・嗜好品、21%がホームケア用品である。その内訳を以下に示す。
売上内訳の推移

美容・パーソナルケア用品は微増、食品・嗜好品は微減、ホームケア用品は微増となっている。
また領域ごとに利益率が異なり、最も高収益のBeauty&Personal Care部門が21%となっている。そしてどの領域も利益率が伸びており、経営改善していることがはっきりわかる。現在ユニリーバは世界展開をほぼ終えており、不採算部門のカットをしているため。
個別ブランドについて
Beauty& Personal Care ブランド

ブランド名 | Dove(ダヴ) |
分類 | Beauty Care (美容品。Soap業界とも重複) |
内容 | せっけんブランドで、ボディソープ・洗顔料・ ヘアケアの商品をもつ。 |
特徴 | Dove世界展開できているのは当社が途上国にて、 手洗いの習慣付けの啓蒙活動を続けた事が大きい。 短絡的な米国企業と違い、長期的なスパンで戦略を 立てるユニリーバらしいブランドでもある。 |

ブランド名 | mod’s hair(モッズヘア) |
分類 | Beauty Care (美容品。Soap業界とも重複) |
内容 | 髪のスタイリング専門。シャンプーから スタインリング剤(ワックス・ジェル・スプレー) を展開する。 ヒートプロテインのCMでおなじみ。 |
特徴 |
Home Careブランド

ブランド名 | GIFF(ジフ) |
分類 | Home Care (ホームケア。Soap業界とも重複) |
内容 | 「ステンレス表面の、カビは落とすが傷つけない」 という成分:カルサイトによって掃除する。 |
特徴 | 日本でも1980年に登場したロングセラー商品。 研磨剤ならジフと、選択されやすい。参入障壁も 食品よりも高い。 |

ブランド名 | Domestos(ドメスト) |
分類 | Home Care (ホームケア。Soap業界とも重複) |
内容 | 除菌クリーナー。 次亜塩素酸はコロナウイルス除菌薬として も一役買っている。 |
特徴 | 日本でも「排水口掃除はドメスト」と思い浮かぶ 位に信頼性高い。 参入障壁は食品よりも高い。 |
Foods&Refreshment ブランド

ブランド名 | Lipton(リプトン) |
分類 | Foods&Refreshment (食品&嗜好品) |
内容 | 紅茶ブランドとして世界No.1の売上を誇る。 ティーバッグ以外にもペットボトル・紙パックの 製品も持つ。 |
特徴 | 食品ゆえ参入障壁は高くなく、 食品の宿命として競争が激しい。高収益ではない。 |
投資家としての見立て
コロナウイルスワクチンの会社(ファイザーやモデルナ、アストラゼネカ等)やガジェット会社(アップル、マイクロソフト)の様に瞬間的に話題になるような、派手な銘柄ではない。それでも「美容品」「ホームケア」といった利益率の高い分野で世界展開に成功していて、実際にいたるところでみかける会社である。ブランド名をみて「これもユニリーバだったのか」と思うことも多いはず。
不景気でも止められない必需品・超高額商品で勝負していない(むしろ低価格帯)・などと、安定性の高い特徴が多いのは評価できるポイント。
出典元(企業の年次報告書・10K・その他)
ユニリーバ(UL)年次報告書(英語:2019年、2018年、2017年)
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