米国のヘルスケア・セクター(製薬企業)に属す、ファイザー(PFE)の株式分析について。
国 | 米国 |
配当金の税率 (配当税率) | 28% (=所属国の現地課税10% ×日本課税20%) |
業種11分類 | ヘルスケア・セクター |

売上高・利益・営業利益率

直近15年で、売上高・営業利益は停滞気味。しかし営業利益率は25%前後と高めである。
売上地域については、この様になっている。

地域別推移は、この様になっている。

世界の医薬品市場が拡大していくなかで、どの地域でも売り上げを伸ばせていないことが解る。
株主還元(配当金・自社株買い)

営業利益は停滞している(左軸)。
発行株式数は近年10年こそ右肩下がりだが、2008~2010年に大きく増やしてしまった(右軸)。じつは大幅減配を喫した時期と一致し、増資する羽目になるくらい資金繰りが悪かった。

一株利益は意外なほど高く、大きな右肩上がりである。
一株利益の上昇は、主に発行済み株式数の減少(=自社株買い・消却)によるものである。毎年10%弱もの自社株買いをし続け、10年で60%程度に減らしたゆえの数字である。
(例:分母が同じ1億円の利益でも、分子である株式数100万株なら1株100円、株式数50万株なら1株200円の1株利益)
株価・営業利益の伸び率(平均値と比較)

営業利益・営業利益は(S&P500)に劣る。
直近の株価
財政健全性
自己資本、他社資本(負債)、DEレシオの推移を示す。

DEレシオは1.5前後と高め続き。これは積極的な設備投資によるもの。また自己資本少な目である米国企業では3弱まではザラである。
売上内容について
売上内訳は、医療用医薬品がメインである。ワクチンも10%程度は占めるが、近年はOTC(一般ヘルスケア)が不調である。

医療用医薬品>代表的な個別薬の売上について

期待できるものはワクチンのプレベナー、分子標的抗がん剤のイブランス、ゼルヤンツ。あとは売上が小さいが近年強化しているバイオシミラー医薬品。ほかは期待できない。
個別商品について
商品名 | イブランスカプセル® (一般名:パルボシクリブ) |
分類 | 低分子医薬品 (低分子なのに分子標的薬剤に属す) |
治療対象 | がん(乳癌転移例) |
特徴 | 特許は長く残る。 内服薬ではあるが、超高額な分子標的薬剤。 改良型の「アベマシクリブ」登場で少し危うい。 |
商品名 | ジェノトロピン皮下注® (一般名:ソマトロピン) |
分類 | バイオ医薬品(その中でホルモン製剤に属す) |
治療対象 | 成長ホルモン分泌不全性低身長 ・成人成長ホルモン分泌不全症 |
特徴 | 週に2~4回程度の自己注射だが、適正量は 一人ひとり細かく違う(ので頻回通院に)。 バイオシミラー発売で減少傾向。 |
商品名 | エリキュース錠®(一般名:アピキサバン) |
分類 | 低分子医薬品 |
治療対象 | 静脈血栓塞栓症、非弁膜症性心房細動 |
特徴 | 薬理区分はDOAC。従来のワーファリンと違い PT-INR測定不要・ビタミンK摂取の考慮不問だが 腎排泄の為高齢者注意である。 ブリストルマイヤーズ(BMY)からも発売。 |
商品名 | エンブレル皮下注® (一般名:エタネルセプト) |
分類 | バイオ医薬品(その中で分子標的薬剤に属す) |
治療対象 | 関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病など |
特徴 | 薬理区分はTNF-αの補足剤。 (米国以外は)特許切れし、バイオシミラーに置換わり。 |
商品名 | チャンピックス® (一般名:バレニクリン酒石酸塩) |
分類 | 低分子医薬品 |
治療対象 | ニコチン依存症の禁煙補助 |
特徴 | 同じ禁煙補助剤でも従来ニコチネルと比べ 副作用が少なく、確実性に勝る。しかし副作用 が多く、また最初7日間は喫煙OKと解りにくい |
商品名 | リリカ錠® (一般名:プレガバリン) |
分類 | 低分子医薬品 |
治療対象 | 神経障害性疼痛、線維筋痛症の疼痛 |
特徴 | 神経系の疼痛は加齢で増加する上、 「帯状疱疹」の疼痛にも使用可能で 売上が大きく伸びた。 特許切れの為、売上減が予想される。 |
病院薬剤師からみた見立て
業界2位(2019年時点)だが、新薬にあまり強くなく売上減しつづけるのが気になる。しかしバイオシミラーで結果を出せていて、また肺炎球菌ワクチン(プレベナー)にも強い。OTCも売っており、ポートフォリオが結構分散でき、(期待されてないため)割安な割に安定性がある。
出典元(企業の年次報告書・10K・その他)
ファイザー(PFE)年次報告書(英語:2019年度・2018年度・2017年度)
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