スイスのヘルスケア・セクター(製薬企業)に属す、ロシュ・ホールディングスの株式分析について。
国 | スイス |
配当金の税率 (配当税率) | 48.2% (=所属国の現地課税35% ×日本課税20%) |
業種11分類 | ヘルスケア・セクター |

売上高・利益・営業利益率

直近15年で、売上高は上昇傾向。営業利益率は30%前後で一定している。
売上地域については、この様になっている。

地域別推移は、この様になっている。

殆どの地域で一貫して伸び続けていることが解る。
株主還元(配当金・自社株買い)

営業利益は右肩上がり(左軸)。
発行株式数は6900×10^6株で一定している。発行株式が減っておらず、自社株買いには消極的である。

一株利益は右肩上がり。配当金は波が有って連続増配とはいかないが、長期的に伸び続けている。。
今後も連続増配の余裕あり。それは一株利益>>配当金となっているため(=配当性向が100%を大きく下回る)。
株価・営業利益の伸び率(平均値と比較)

営業利益・株価とも市場平均(S&P500)を上回る伸び。なお株価の伸びに配当金は加味されていないので、実際はこれ以上に伸びている。
直近の株価
財政健全性
自己資本、他社資本(負債)、DEレシオの推移を示す。

2008➡2009年と、負債が急増している。これはジェネンテック社への融資、日本の中外製薬の株式取得が大きな理由。それは大成功だったようで、前述のとおりペイできている。
売上内容について
売上内訳は、100%が医療用医薬品である(一般医薬品・生活必需品などは一切売っていない)。その内訳を以下に示す。
医療用医薬品の内訳

医療用医薬品の中では、対象疾患が分散できている事が特徴。
医療用医薬品>代表的な個別薬の売上について

特定薬への依存が小さく、複数の薬を満遍なく売上ている。その為低リスクといえる。
また分子標的薬剤の商品数が多く、主要薬のほとんどを占めている。
個別商品について
商品名 | アバスチン®(一般名:ベバシズマブ) |
分類 | バイオ医薬品(その中で分子標的薬剤に属す) |
治療対象 | がん(大腸癌・肺癌など) |
特徴 | 特許切れもBS薬は適応少ないのが救い。 有効性・安全性は凄くこれで救えた命は多い。 現場でも「〇〇+B-mab」レジメンはなお増加中。 売上が多く、医薬品別売上ランキングで16位(2018年) |
商品名 | ハーセプチン静注®(一般名:トラスツズマブ) |
分類 | バイオ医薬品(その中で分子標的薬剤に属す) |
治療対象 | がん(胃癌・乳癌など) |
特徴 | すでに特許切れ、BS薬は適応症も多い。 その為置き換え進み売上減少。 売上が多く、医薬品売上ランキングで13位(2018年) |
商品名 | リツキサン錠®(一般名:リツキシマブ) |
分類 | バイオ医薬品(その中で分子標的薬剤に属す) |
治療対象 | がん(肺癌) |
特徴 | すでに特許切れ、BSは適応症も多い。 その為置き換え進み売上減。 分子標的薬の黎明期から存在する、 パイオニア的な薬。 |
商品名 | パージェタ静注®(一般名:ペルツズマブ) |
分類 | バイオ医薬品(その中で分子標的薬剤に属す) |
治療対象 | がん(乳癌など) |
特徴 | 2017年あたりからの新しい薬、特許長い。 乳癌でハーセプチン+本剤の有効性が証明。 その為売上伸びている。 |
商品名 | テセントリク静注®(一般名:カルフィルゾミブ) |
分類 | バイオ医薬品(その中で分子標的薬剤に属す) |
治療対象 | がん(肺癌) |
特徴 | 上市したてで、特許長い。 現在も適応がん種拡大中。 超高額で有名なオプジーポの改良版。 |
商品名 | カドサイラ® (一般名:トラスツズマブ エムタンシン) |
分類 | バイオ医薬品(その中で分子標的薬剤に属す) |
治療対象 | がん(乳癌) |
特徴 | 自社のハーセプチンの改良型で、腫瘍細胞の HER2受容体にのみ届く様に構造変化した。 安全性がより高い為、使用例が増加している |
商品名 | ルセンティス硝子体注射®(一般名:ペルツズマブ) |
分類 | バイオ医薬品(その中で分子標的薬剤に属す) |
治療対象 | 糖尿病黄斑浮腫 |
特徴 | 失明原因No1の糖尿病性網膜症の治療薬。 この分野は元々治療薬が存在しなかった。 なお、ノバルティス社と共同発売。 |
病院薬剤師からみた見立て
分子標的薬剤を数々送り出しており、とても強い。(患者数の多い)がん領域でも、既存薬はリツキサン・ハーセプチン・ベバシズマブが売上上位だし、それに安住せず新薬も育っている。またこれまで治療法に乏しかった「糖尿病黄斑浮腫」などといった疾患でも、治療可能にしてきた功績がある。医師が使いたくなる薬を沢山持っている。
出典元(企業の年次報告書・10K・その他)
ロシュ・ホールディングス(RHHBY)年次報告書(英語:2008年、2009年、2019年)
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